明日の税理士会を担う人材の育成制度(A-Zセミナー)「民法」
こんにちは、税理士の渡邊美弥子です。
A-Zセミナー第5回の研修は「民法」でした。相続法改正の論点も踏まえつつ配偶者の権利保護、家族間の平等・公平について考察しました。
平成30年7月6日に民法・家事事件手続法一部改正の法律が成立( 7月13日公布)しました。その施行期日は、公布の日から1年以内が原則ですが遺言書の方式緩和については平成31年1月13日、配偶者の居住の権利については公布の日から2年以内とされています。
改正内容を簡単に説明します。
◆民法903条に4項を追加
民法903条1項では、共同相続人のうちに、被相続人から生前に贈与等を受けている者があるときは、その価額を加えたものを相続財産とみなします。そして贈与を受けた共同相続人は、法定相続分(または遺言で定められた相続分)からその贈与等の額を控除します。これは、共同相続人間の公平を図るための制度です。(特別受益の持ち戻し)
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今回の改正で903条4項(持ち戻し免除の意思表示の推定規定)が追加されました。(公布の日から1年以内に施行)
その内容は、婚姻期間20年以上の夫婦の一方が他方に、その居住用建物又はその敷地を遺贈又は贈与したときは、被相続人たる夫婦の一方は、その遺贈又は贈与について903条の1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定するということです。
夫婦の財産は2人の協力によって形成されたものであるから夫婦間においては贈与という認識は一般的に薄いということと、配偶者の老後の生活保障を意図して贈与される場合が多いということが、新法制定の背景にあります。
◆民法1050条新設(特別の寄与)
民法904条2項では、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、共同相続人の協議によってその者の寄与分を定め、相続開始の時における被相続人の財産の価額から寄与分を控除したものを相続財産とみなします。そして寄与をした相続人は、このみなし相続財産をもとに法定相続分又は指定相続分にしたがって算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とします。
尚、相続分の協議が整わないとき等は、家庭裁判所が寄与分を定めます。
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民法1050条が新設されました。(特別の寄与)
現行制度では相続人以外の者は、被相続人の介護に尽くしても相続財産を取得することはできませんでした。例えば亡き長男の妻が、被相続人の介護を長年一人でかかえてしていたとしても相続財産の分配にあずかれませんでした。
民法1050条新設によりこの亡き長男の妻(特別寄与者)は、相続人に対して介護等の貢献に応じた金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができるようになりました。
この特別寄与料の支払いについて、当事者間の協議が整わないとき等は特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます(特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内又は、相続開始の時から1年以内)。
◆民法968条における自筆証書遺言の方式が緩和されました。
全文の自署を要求している現行の自筆証書遺言方式を緩和し、パソコン等で作成したものや、銀行通帳コピー、不動産登記事項証明書等を自筆証書遺言の財産目録として添付することができました。この場合には、これらの目録の全頁に署名押印をしなければなりません。
◆自筆証書遺言書の保管制度の創設(法務局による遺言書の保管等に関する法律 公布の日から2年以内に施行)
遺言者は、無封の自筆証書遺言書を法務局に保管申請できるようになります。遺言者は、遺言書を保管している法務局に対して遺言書の返還または閲覧請求することができます。これらの請求は、遺言者が自ら法務局に出向いて行わなければなりません。その遺言書については遺言書保管官が原本とその画像情報の管理をします。また遺言者はその保管申請の撤回をすることができます。この場合、遺言書保管官は、遺言者に遺言書を返還するとともにその画像情報を消去します。
遺言者の相続人、受遺者は、遺言者の死亡後、遺言書の画像情報を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます。その時は遺言書保管官は速やかに、当該遺言書を保管していることを遺言者の相続人、受遺者及び遺言執行者に通知します。
法務局遺言書保管所に保管された遺言書については民法1004条(相続開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して検認請求しなければならない)の適用はありません。
◆遺産分割前における預貯金債権の行使
従来、銀行等金融機関は、相続発生後、遺産分割協議書があるか、相続人全員からの払戻請求(全共同相続人の同意書と印鑑証明書の提出)があるときのみ被相続人名義の預貯金の払戻に応じてきました。遺産分割終了まで共同相続人単独では生活費や葬儀費用、相続債務の弁済のために、被相続人の預金の払い戻しができないという問題が生じていました。
この対応策として2つの仮払い制度が導入されました。
- 仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになります。(要件緩和)
- 預貯金債権の一定額については、家庭裁判所の判断を経なくても、単独で金融機関の窓口における支払いを受けられるようになります。
相続開始時の預貯金債権の額(口座基準)×1/3×当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分=単独で払戻しを受ける額
◆ 配偶者短期居住権の新設
配偶者は、相続開始時に被相続人の居住建物に無償で住んでいた場合、最低6か月はその居住建物を無償で使用する権利を取得します(配偶者短期居住権)。これによって仮に被相続人が居住建物を遺贈してしまったり、反対意思表示した場合でも、居住建物の帰属が確定するまでの間(配偶者が居住建物の遺産分割に関与する時)又は最低6か月の間は配偶者の居住が保護されます。
◆配偶者居住権の新設
現行制度では、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の居住建物を取得する場合に、他の財産を受取れなくなってしまい生活費が不足してしまうというケースも見受けられました。
そこで配偶者は自宅で居住を継続しながらその他の財産も取得できるように配偶者居住権を新設しました。
配偶者居住権(要登記)とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の建物に終身又は一定期間住める権利です。
配偶者は遺産分割又は遺言等によって配偶者居住権を取得することができます。
配偶者居住権の評価方法については割愛します。・・・法務省のホームページに載ってますが・・・・・・
◆遺留分の請求の金銭債権化(遺留分制度の見直し)
遺留分減殺請求権の行使の対象が現物であっても、遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払い請求権が生じることになります。この場合において、受遺者又は受贈者が金銭を直ちに準備できないときは、裁判所に対し、金銭債務の全部または一部の支払いについて期限の許与を求めることができます。
遺留分減殺請求権の行使により不動産等が共有状態になって事業承継の支障となる問題の対応策として見直されました。
改正内容を簡単に説明しようと思ったら結局長々と書いてしまいました💦
講義では様々な事例の紹介がありました。
グループワークでは、4題の相続事例(課題)が提示されました。
現行法においての考え方や妥当方法、最善策のプレゼンと、改正相続法のもとではどのような方法が考えられるかという内容のプレゼンテーションが各グループごとに行われました。
さすが実務家集団!サクサクと課題をこなしてらっしゃいました。
個人的に・・・
配偶者居住権については価額の算定・・・節税スキームに使われそう・・・?
・・・・・と改正相続法について、まだわからないところがあります・・・
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